山紫水明

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「母さん、姿が見えないと思ったらやっと出てきたか」 「息子の門出を見送らないで親が勤まるはずないでしょう」 満足感たっぷりの笑顔で言った。 母親は長い黒髪を手で払った。 中々色っぽいシーンなのだろうが、俺はそういった感覚は疎いので知らん。 まぁ綺麗な部類には入るのだろうが、何せ比べる対象がいない。 いや、アイツがいたか。 でもまぁそれは置いておこう。 「んじゃ行こうか」 いつの間にか父親は席を立っていた。 すでに空間転移の準備を始めていた。 「学校は楽しいわよ~」 俺より母親の方がテンションが上がっていることは確かだ。 「学校ねぇ」 ゆっくりと重い腰を上げる。 「財布は持ってけよ」 「いやにリアルな持ち物だな」 まぁどの世界に行っても金が有るに越したことはないがな。 「それだけでいいの?」 右のポケットに財布を忍ばせた。 「神器は持ったの?」 母親の言葉は盲点だった。 「おいおい。エデンはこれまでとは違ってディバインが普通に存在するんだぞ」 「ますますめんどくせぇな」 宝箱のような形のケースを開け、6個ある指輪のうちの1つを右の中指にはめる。 通常神器は指輪の形をしていて、ディバインを注入することにより個々の武器に姿を変える。 「それだけでいいのか?」 父親は心配そうに言った。 「そんなにヤバイの?」 全部持ってけってのか? 「万が一を想定するんだったらな。はめなくてもいいから持ってけ」 「分かったよ」 そこまで言われたら断れませんよ全く。 仕方なくケースを手に取る。 「ルーン。食ってくれ」 呟くと同時にケースが姿を消す。
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