無題

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   「ちょっと待ってくれ。子猫の様子が気になるんだ」  俺の声に振り向いた友人たちは意外そうな顔をして言った。  「だってそいつ生きてるんだろ?だったら別にいいじゃん」  もう一人も相槌を打つ。  「だよな。死んでたらおもしろかったのにな」  「おもしろいって……」    俺は期待を裏切られたような気持ちになりながら、もう一度子猫のほうへ向き直る。子猫は最初に発見した時と同じようにぐったりと横たわっていた。    「もうほっとけよ。周りの人がジロジロ見てるし、早く行こうぜ」    友人がじれったいといった感じでそう言った。周りを見回すと、前を通りかかる人々が横目でチラチラとこちらを見ていることに気づいた。    倒れている猫の前にじっと佇む学生。ずっと奇異の目で見られていたに違いない。    そう思うと急に自分の行動が恥ずかしくなり、つい反射的に子猫のそばを離れてしまった。すぐに後悔に似た感情が心の中に押し寄せてきたが、それには気づかない振りをした。    友人たちがやっとか、と言いたげな表情を見せた後、再び歩き出す。    俺はなんとも言いようのない罪悪感を心に引っ掛けたまま、足早にその場を立ち去った。  
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