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いた。
昨日と同じ場所、同じ体勢。子どもの頃とは違う。あの時は自分から会いに行ったが、今はむしろいなくなっていることを期待していた。
なんて皮肉なことなのだろうか。
子猫はこちらの存在に気づいていないのか、首を上げることもなくじっとしていた。
「あれ昨日の猫だよな。まだいたのか」
友人の一人が興味なさげにつぶやいた。
「猫とかいいから、立ち止まってないで早く帰ろうぜ。どうせ死んでんだろ?」
もう一人がそう催促する。
死。
昨日俺が見捨てたせいなのか。脳裏に昨日の光景がよぎり、一瞬で後悔と自責の念に駆られた。
同時に、自然と足が子猫の方へと動いた。しゃがんで子猫の体に手を触れる。暖かい。すぐに子猫は目を覚まし、顔を上げた。
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