無題

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 死んでいたわけではなかったが、昨日よりも弱っていることは火を見るよりも明らかだ。  どうする?  見捨てようが誰も怒りはしない。ただ少し、ほんの少しだけ心が痛むだけ。  だから自分はこのまま置き去りにして、またこの場から逃げるのか。  それは、そんなのは、もう―――嫌だ。  迷いは一瞬。  「……そうだよな」  俺は自分に正直でありたい。自分を偽ることから抜け出したい。  そして変わりたい。  ゆっくりと子猫を持ち上げる。もう周りの目も気にならない。  「おい、なにしてんだよっ!」  友人が心底驚いたような顔をして声をあげる。  「なあ、この辺に動物病院ってあったっけ」  きっと変われるさ。    
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