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大きなスポーツバッグを胸の前で抱え込みながら、結城は航空券を覗き込んで自分の座席を確認した。
初めてのフライトは幸いにも、窓際の席を手に入れることができたようだ。
席についてからすぐに、なんとかスポーツバッグを上の棚に入れようとしたが、あまりに高すぎて結城の身長ではとうてい届かない。
困り果てた顔をして立ちすくんでいると、偶然傍を通りかかった親切そうなフライト・アテンダントが、その細い腕で見事に鞄を持ち上げて、棚の中にしっかりと収納してくれた。
ようやく落ち着いて席についた結城は、まるでそれ自体が操作室のようなモニター付きの座席を、物珍しそうにまじまじと眺めた。
ぼんやりとした面持ちのまま、ぎこちなくもなんとかシートベルトを締めたとき。
「なぁ、そこ、空いてるか?」
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