28人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「あの……このキャンプのスタッフの方ですか?」
青年は、結城のよどみない敬語に一瞬目を見開いたものの、すぐに応じた。
「おう。ガキんころカナダに住んでたから、ちっとばかし英語だけは得意でな。高校のボランティアから強制的に行けって指令が出されたんだ。ま、給料もあるって言うから、いいかなーって思ってよ」
「へぇ……」
今度は青年が質問してくる番だった。
「んで、俺からも聞くけど、……ひょっとしなくともオメー、ツレなしか?」
「……はい?」
「知り合い、いないんだろ。なんか浮いてるっつーか……ハッキリ言わせてもらうと、沈んでるからよ」
彼はそう言うと、遠くの座席でにぎやかに騒ぐ小学生たちを、親指でくいっと示した。
そこには同じ学校の生徒の顔ぶれもちらほらと見えたが、そのどれもが結城を毛嫌いしている者たちだった。
.
最初のコメントを投稿しよう!