アネモネ -anemone-

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. 「あの……このキャンプのスタッフの方ですか?」  青年は、結城のよどみない敬語に一瞬目を見開いたものの、すぐに応じた。 「おう。ガキんころカナダに住んでたから、ちっとばかし英語だけは得意でな。高校のボランティアから強制的に行けって指令が出されたんだ。ま、給料もあるって言うから、いいかなーって思ってよ」 「へぇ……」  今度は青年が質問してくる番だった。 「んで、俺からも聞くけど、……ひょっとしなくともオメー、ツレなしか?」 「……はい?」 「知り合い、いないんだろ。なんか浮いてるっつーか……ハッキリ言わせてもらうと、沈んでるからよ」  彼はそう言うと、遠くの座席でにぎやかに騒ぐ小学生たちを、親指でくいっと示した。  そこには同じ学校の生徒の顔ぶれもちらほらと見えたが、そのどれもが結城を毛嫌いしている者たちだった。 .
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