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「……で、お前は?」
ジョージはシートベルトを引っ張り出しながら、片目を閉じて問うてくる。
「榮藤結城です。栄える、の上が火ふたつの榮に、藤をつけてエトウって読むんです。下は結ぶ城って書いて、ユウキ」
「へぇ~、変わってんな!」
「ジョージのほうが変わってると思うけど……」
「だぁから、ジョージじゃねぇってんの!」
ジョージがそう言った瞬間に、ガコン、と車体が軽く揺れて飛行機が動き出した。
結城は驚いて反射的に身構えたものの、ジョージは大あくびをしながら手を振った。
「まだまだ。離陸まで少なくとも数分はかかるぜ。それまではカメみてーなスピードで滑走路をうろうろしてやがるからな。ただし離陸は唐突だぞ。いいもんだぜ、ぐんぐん加速して、あとはひゅーんだよ、ひゅーん。いやぁ、何度乗ってもあの瞬間が一番だね、飛行機ってのは」
ジョージはひとりでうんうんと勝手にうなずきながらそう言った。
知らず知らずのうちに、結城の心は少し弾んだ。
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