第一章『黒く深い深海へ』

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「これ、何?」    ハルカも状況を理解できないでいるようだ。   「………さあ…?」    僕もさすがに不安の色を隠せない。    「とにかくロビーに行こう。」    そう言って僕が席を立った時だ。    「牧瀬アラタさんと大久保ハルカさんですね?」    五人くらいの防護服を着た人が僕たちに話かけてきた。   「………ええ、そうですが?」    ハルカは座ったまま、立ち上がった僕の袖を小さく掴んでいる。   「あなた方お二人はこちらに来ていただきます。」    防護服を着た連中が僕たちを取り囲んだ。    「なぜ?理由を説明していただけますか?」    なぜか自分でも驚くほど冷静に聞き返した。   「それも含め、こちらでお話いたしますので。」    ハルカを連れて突破することはできた。しかし状況を知るのが先だと考え、僕たちは素直に彼らの案内どおりに喫茶店を出た。
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