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「あー、はいはい。じゃあ出しますよ?」
発進したタクシーの車内で、僕は一息ついた。
「ねぇ、アラタくん。これマズイよ……。」
泣きそうな顔でハルカは僕に語りかけてくる。
「ああ。確かにマズイな。なんとかしないと…。」
「いや、そうじゃなくて、アラタくんは私にかまわず検査を受けて。」
「ダメだ!!ハルカを見捨てることはできない!!!」
「見捨てるって、私は研究室に居たらいいだけだし………。」
「何言ってんだ!!研究室に居たら研究されるだけだ!!!!助けてくれる保証もないし今後、君の自由は無くなるんだよ!!!?」
「え!!?そうなの!!!?」
しばらくの沈黙。妙な空気だった。
「お客さん、喧嘩はいけませんよ、喧嘩は。」
沈黙を破ったのは運転手だった。
「ああ、すいません。気にしないでください。」
そう言いながらも、僕はタクシーの無線が気になっていた。いつ奴らがこのタクシーを嗅ぎ付けるか、気が気じゃなかった。
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