序章『日常という幸せ』

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「アラタくん、明日……空いてる?」    大学からの帰り道、ハルカは恥ずかしそうに言った。    「え?あ…空いてる空いてる!!空いてるよ!!」    僕は嘘をついた。本当は明日、大学の部活がある。しかし物事には優先順位というものがある。     僕にとってハルカとの約束は最優先だ。    「あ…あの、今日突然リツコから映画のチケットもらって…。来週は私、用事があるから明日の日曜日しか時間なくて。突然でごめんなさい。」   「いやいや、ちょうど僕も暇だったから。」   「でもアラタくん、明日空手部は?」   「明日?あ、明日は部活休みだから大丈夫だよ。」   「そう、よかった。」    僕はその日、家に帰り着いた後すぐ顧問に電話をし、『ケガをした』と嘘をついて部活を休むことを伝えた。
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