序章『日常という幸せ』

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「おはよう、アラタくん。」   「ああ、おはよう。で?今日は何を観るの?」    日曜日の朝だから、人通りはまだ少ない。待ち合わせの時間は10時だったが、僕は30分前に着き、近くのコンビニで時間を潰した。   「実は私もよく知らないんだけど、感動するって話題の映画らしいよ。」    「へぇ…。楽しみだね。ハルカ、泣くんじゃないの?」    「…………恥ずかしいから我慢する。」    少しすねたようにはにかむ彼女を見ると、すごく幸せな気持ちになった。    僕たちは早速映画館に向かった。     内容は、若くして急性骨髄性白血病という病に侵された女性が、死ぬまでの苦悩、また、死を目前に家族・彼氏に支えられ充実した生活を送るというノンフィクション作品だった。   「グスン……ウ…ウウ……。」   「ちょ…ちょっとアラタくん、恥ずかしいよ…。もう映画館出たんだから……。」    「…グスン…いや、だっで…がわいぞうで(かわいそうで)……。」     とにかく僕は涙を我慢できなかった。特に彼女の死を目前に、辛く悲しいはずの彼氏が、彼女が死ぬまでひたむきに愛情を注ぐ姿に共感できた。
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