序章『日常という幸せ』

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 それから僕たちは近くのファミレスで昼食を食べた。さすがにその頃には僕も泣き止んでいたが、泣きすぎて目は真っ赤だった。    ファミレスを出た僕は、ふと呟いた。    「なんか……世の中には苦しんでいる人がいっぱいいるんだな…。何かできないのかな……。」    その言葉を聞いたハルカは、とても優しい笑顔で僕を見て言った。    「アラタくん、本当に優しいんだね。」    その時、商店街に入った僕は、臨時の献血所を見つけた。    「よし。あそこで献血していこう。」   「アラタくんがするなら私もする。」     今思うと僕はバカだった。献血は良いことだが、僕の一時の正義感のせいでハルカをとても残酷な現実に送り込んでしまったのだから。    献血所に入り、受付をする。何が凄いかって、今の献血所はジュースやらお菓子やら至れり尽くせり。    世の中のために良いことをしたくて来たのだが、逆に贅沢をしているようで申し訳ないくらいだった。
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