序章『日常という幸せ』

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 献血が終わり、僕たちは帰ることにした。    「今日は楽しかったね。ありがとう、アラタくん。」   「いや、お礼を言うのは僕の方だ。ありがとう。」   「また行こうね。」    僕はハルカのこのセリフが妙に尊く感じた。    去っていくハルカの背中を見ながら、もう二度と一緒に映画には行けない感覚に襲われた。     理由はわからない。    ただひとつ言えることは、今が『幸せ』だということ。     そしてその『幸せ』は、当たり前に永続するものではなく、いつかは終わってしまう尊いものであるということ。     言い知れぬ不安に苛まれながら、僕は幸せの尊さに気付いた。
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