淀み。

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「ベリアルーひまー。」 ぐるぐるぐるぐる。 記憶が頭を掻き回す。 パンクしそうな膨大な知識が津波のように人格を崩そうと押し寄せる。 「ねーベリアルー。」 薄暗い北向きの部屋にベットが一つ。 決して趣味が良いとは言えない部屋で、僕は蝋燭に火を灯してぷらぷらと揺らしていた。 「貴方は本当に王の魂をお持ちなのか、時折不安になります。」 丸眼鏡を掛けた黒髪短髪の紳士が焼きたてのアプリコットパイを片手に部屋に入ってきた。 「あんた誰?」 黒い神父服の裾をなびかせて紳士が豪快に倒れた。 「あーー!!自信作のアプリコットパイ!!!」 こうばしい薫りが部屋に満ちた。 彼の服はアプリコットのジャムでベトベトだ。 「・・・アキラ様、私を忘れるなんて冗談でもひどいです!」 可愛そうに、いい大人がマジ泣きしてるよ。 「だって僕が呼んだのはベリアルだもん。 ムルムルのでしゃばりんぼー。」 そう、別に僕はこいつを知らないわけじゃない。 名はムルムル。背丈は178cm。趣味はお菓子作り・・・正体はソロモン七十二の悪魔の一柱。 さっき呼んだベリアルもムルムルと同様の悪魔だ。   僕はソロモン王の記憶と力を引き継いでいる。 彼等は王の器として僕を守ってくれているのだ。   記憶が暴走しかけたとき、知識に押し潰されそうな時は彼等と触れ合うと何故か自分を取り戻せる。 「ベリアルは先程人間の雌の尻を追い掛けていましたよ。」 「また?僕だって女の子のおしり追い掛けたいよ。」 ため息を吐くとムルムルが興奮して清い男女交際について語った。 うん、なんていうか・・・ 「うざい。」 あ、声に出ちゃった。 ムルムルは大粒の涙をぽろぽろこぼして抗議した。 「信じられません!そのお体にうつる前からですけどね?!王は」 「僕は『アキラ』だ。口を慎め。」image=49416187.jpg
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