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アモンはムルムルにやたら冷たい。
うざいのはわかるけどもう少し仲良くしてほしいな・・・
また蝋燭に火を灯した。
ムルムルがパイを作り終えるまで数時間。
もう一度ベリアルを呼ぶか。
僕はぷらぷらと火を揺らした。
「誰かをお呼びですか?」
金の長い髪、だらしなく纏った白い布。
顔立ちはこの世のものと思えぬ美しい男が、美しい声で答えた。
頭には黒い輪が浮かんでいる。
「あら?女の子はもういーの?」
先程までムルムルが話していた女の尻を追い掛けていた悪魔・・・ーベリアルだ。
ベリアルはドアに寄り掛かって冷めた目をしていた。
「君を呼んでいたんだ、ベリアル。」
「貴方が追い掛けろというから彼女をマークしていたんですよ。
中断させてまで呼ぶなんて、何があったんです?」
「ムルムルがパイを作ってるんだ。
できたら一緒に食べよ。」
ベリアルは大げさなジェスチャーでため息を吐いた。
「それなら私でなくともアモンがいるでしょう?」
「だめ、あのこムルムルきらいなんだもん。」
「他は?もっといるでしょう。」
「あとは皆三十八を探してる。
アモンの予言が曖昧でどこにいるかわかんないんだよ。
」
欠けた七十二の悪魔・・・なぜかわからないが一刻も早くそろえたいんだ。
三十八と三十九・・・これさえ揃えば全てだ。
手がかりがないいまはアモンの見通しの力に頼っている。
「ベリアルに見てもらってるのは灰空家の長女だろ?」
「灰空虚鈴、アモンの予言によれば三十九が現れる可能性が高い最有力の鍵穴です。」
アモンが言うなら間違いない。
しかも鍵穴・・・悪魔を従える素質まである。
放っておくと三十九を奪われかねないから本来はベリアルを付きっきりにしたいのだが
「アヤも一緒だから少しくらい離れても平気。」
何故か妹のアヤと仲が良いんだよな。
様子ならあとでアヤに聞けばいーや。
「アヤちゃん可愛いですよね。」
「手だしたら消すよ。」
ベリアルは洒落にならない。
奴にまかせたらアヤはきっと、いや絶対泣く。
僕の目が本気であることを悟ったのか、ベリアルはムルムルに話題を変えた。
お菓子作りの意味などを散々からかいながら談笑した。
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