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「話したね。」
ふ、と扉を開けずに誰かが言った。
「アモンか。」
「話したね、ムルムルに二階堂の話。」
アモンは閉まり切っていない扉の隙間からじっとりと視線をからめた。
「これは警告じゃない。」
「じゃあ予言かな。」
「いや、予定だ。」
幼い顔に似つかわしくない口調でアモンが続けた。
「ムルムルは必ず二階堂のもとへ行く。
話をした時点でこの運命が決まった。」
「アモン、ムルムルは」
アモンは鋭く目をぎらつかせ、僕の言葉をさえぎった。
「ムルムルは消える。
ムルムルは消える。
二階堂の手によりムルムルは消える。」
アモンによって刻まれた台詞は深く心に残った。
二階堂の手によりムルムルは消える。
はっきりと予言の悪魔が囁いた。
僕のおかげで予言が予定になったらしい。
アモンが立ち去ったあとに頭の中で何度も繰り返される。
生温いパイの薫りが、淀んだ胸をさらに掻き乱した。
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