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「兄ちゃん、逮捕されたの?」 慌てて部屋から飛び出して、母にしがみ付いてそう尋ねる。 「違うの、逮捕はされないけど、でもね……」 「凄く、怒られる事をしたんだよ。だから注意をされていたんだ。父さんと兄ちゃんはもう二度としませんって謝りに行かなきゃいけないんだよ、許してもらわなきゃいけないんだ。逮捕される訳じゃないよ、琴子」 ネクタイを締めながら、父が教えてくれた。 「……兄ちゃん、何したの?」 「お友達をね、殴ったの。それで無理矢理ね、お金をとったんだって。本当にどうしてあの子は……」 母は顔を掌で覆ってまた泣き始めた。 さっと、血が引いた気がした。じわっと涙腺が熱くなる。「私の、せいだ」思わずそう呟くと、父も母も不思議そうにこちらに視線を向けた。ラビィちゃんだ、きっとそうだ。 「兄ちゃんは、友達から借りたって言ってたの。だからきっとそれなの!私がウサギとってって、お願いしたから!」 泣きそうになりながら、つっかえながら。話の順序も滅茶苦茶に、断片的な言葉を並びたて、ゲームセンターでの一部始終を説明した。それでも父と母は、何が有ったのかを理解したようだった。 「琴子、そのウサギ、貸しなさい」 黙って聞いていた父だったが、私が喋り終わるのを待って「さぁ」と手を差し出した。 「そのウサギは、持っていちゃだめだ」 「ラビィちゃん、どうするの?」 「捨てる」 私が息を呑むのと、母が戸惑いながら「あなた、それは……」と父を宥めるのは同時だったと思う。だが父は首を左右に振って、頑として譲らない。 「駄目だ、捨てる」 ラビィちゃんが取り上げられた。 「どうして?ラビィちゃんは悪くないのに!」
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