1.秋風に舞う君

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「…まぁ、つまりはたいした力を使わなくてもあの山を氷付けに出きるほどに強力な敵ってこと。力をうまく使えない散葉……先輩じゃどうこうできないんじゃ…」 「ふっふ~ん。この場所を囲んでるフェンスを見なさい、あれは特大火炎弾で触れてもないところが変形したのよ。結構な力でしょ?」 響は言われたとおり視線を巡らせた。ほう、と感嘆の息を漏らすがすぐに、ん?と首を傾げる。 「力は使えないんじゃ?」 「神降ろしよ。体を介さず魂から零也くんの指輪に神の力を送って、それを取り込んで力を零也くんが行使する。携帯電話とかの受信みたいな感じかな?」 「か、神の力を人間が行使する!?そんなの危ないじゃない!」 「それが…零也くんってば魂の許容量が普通じゃないのよね。ふつうの人間がメガバイトで、妖怪がギガバイトくらいの容量だとしたら零也くんってばテラバイト級なのよね」 ふと零也は違和感を感じた。 なんで散葉さんはさっきから携帯電話とかテラバイトとかそんな最近の言葉を知ってるんだろう。戦国時代より前の人なのに。 「あ、その目はなんで時代錯誤を具現化したような私がそんな言葉を知ってるんだ?…って思ったかな?」 う…! ぴったり言い当てられてしまった。なんで散葉さんはこう、僕の考えに鋭いんだろう。 まぁ、実はそれが自分のことをよくわかってるみたいで嬉しいのだけど。 「実は昨日、徹夜で土地に刻まれた歴史を読んでたの。IT系会社の土地だから電気系等についてはかなり詳しくわかったよ?ほら…博識な女の子のほうが…零也くん好きかなって思って…」 ずきん、また胸が痛んだ。 何故だろう?散葉は自分のためにこんなに頑張ってくれているのに、なのに何故こんなに胸が痛むのだろう。零也にはわからなかった。わからない自分が、嫌だった。
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