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とさ────と。
恐らくは零也が痛くならないために腰と後頭部に手を回し、散葉は零也を押し倒した。
…?
零也は頭に疑問符を並べるばかりだ。
微妙に位置がずれて、目の前に散葉の顔があった。
微妙に瞳が潤み、顔が上気している。
「ち、散葉さん?」
そこで堪えきれなくなったかように零也の顔に散葉は思いっきり頬擦りした。
「あぁ、あぁ!零也くん!大好き!好き好き大好き、愛してる!」
「わ、わぁ!?な、な、ななな!?」
「零也くん、実はね?私、ずっと昔から…もう九年前かな?零也くんが初めて星宮神社に来たときから零也くん大好きなの!」
星宮神社。
それが、存在を忘れられたあの場所の名前だと言うのは知っていた。
あれ?星宮?散葉さんの名字は星宮で…あれ?
九年前、母が消えたあの日に確かに零也は星宮神社にやってきた。けれど、あの時には誰もあの場所には居なかった。
あったのは鳥居に石畳、今より原型を留めていた柵と、本堂と────落ち葉に埋もれた、祠。
「ま、まさか!ここはあの祠の中!?じゃあ散葉さんは…」
「わぁお、さすが零也くん!頭が柔らかいね、普通の人間なら祠の中なんて考えないよ。でも、正解なんだなぁ…そして、私は神様!」
沈黙。
ゆっくりと散葉は零也から離れ、体育座りをして畳に指でのの字を書き始めた。
「だって…本当だもん…散葉、神様だもん…」
「う、疑ってませんよ!?散葉さんは神様です!だってこんなに綺麗で…」
零也は口を手で覆った。
な、何を僕は言ってるんだ…!
しかし、時すでに遅し。
散葉がなんか輝いていた。
すっくと立ち上がり、零也に飛びついた。
「もぅっ!零也くん正直なんだから!綺麗だなんて!」
再度、たゆゆんに埋もれて零也は顔を赤く染めた。
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