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と、散葉の口角が物凄く上に向いた。ようするに満面の笑みだ。そして零也は気付いた。ここは散葉の射程圏だと。
認識と同時に両サイドから文字通り神速で二本の白い腕が伸びてきて、目の前のけしからん膨らみも迫る。
迫って、ぶつかる。
ふゆ、ひゆ、ふゅん。
「いいんだよ?散葉、零也くんが望むならなんだってしてあげる…あっ!でも私は零也くんを傷つけたりはできないよ…?零也くんになら、いぢめられてもいいけど!」
「べ、別にそんなこと望んでません!」
「本当に~?ほら、言っちゃいなよ~?心からの欲望を…散葉を食べたいって…」
くぅ…。
零也の胴体部分から音が響いた。胃の中になにもなくなり、それでも消化しようと胃が動いたときに胃の内壁が空気を潰す音。つまり、腹の虫だ。
「お腹すいちゃった?」
「す、すいません…!」
笑いをこらえながら聞いてくる散葉に羞恥心で顔を赤くして零也は謝った。
「むぅ…人間はね?三大欲求で動いてるんだよ?まず、睡眠欲。これはさっき満たされたかな?次に食欲…これは今から私が満たしてあげるからね?」
「最後のひとつはなんですか?」
「性欲」
ぶはっ、零也は咳き込んだ。
まさかここでそれが出てくるとは。
「二つ満たされたらあとは私が…最後の一つ、満たしてあげるからね!」
散葉は言い残して胸が大きく開いたままキッチンに向かって走って行った。
「…きょ、今日はなんだろうなぁ!散葉さんのお料理、凄く美味しいから楽しみだなぁ!」
なんだか怖くなった零也は現実から逃げることにした。
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