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☆
「出せ!出せ!ここから出せ!」
叫びながら彼は走っていた。
しかし、彼が人間でないのはすぐにわかる。まずは青い肌。
次に頭から突き出た角。
決定的だったのは彼が走った場所が凍っていたことだ。
「力を…使わせろ!あいつを…!あの術者を殺させろぉ!」
彼は、雪鬼。
復讐に身を焦がす者。
「がぁぁあああ!」
☆
「この森を抜けるとあるんです」
「へぇ、零也くんよく見つけたね?」
散葉がそう言うのも無理はなかった。広大な敷地の中でも唯一、全く手付かずの森は侵入者を拒むようにざわめいていた。
「えへへ、小さい頃はお母さんを探していろんな場所に行きましたから」
幼かった零也には母がいなくなった事実が飲み込めなかった。どこかに隠れているんだと信じて疑わなかった。だから零也は毎日日が暮れるまで探した。その時にたまたま見つけたのがここだった。
「…そっか。うん、行こう?日が暮れちゃう。今日は目一杯楽しまないとね!」
「はい!」
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