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異変は唐突だった。
「散葉さん、どこいくんですか?」
「あ、あれ?私、零也くんの隣を歩いてなかった?」
そう言った彼女は零也の右斜め前、四メートル先にいた。
「なんかこの森に入ってから感覚がおかしくて…」
「神様を惑わす電波でも出てるんでしょうか?…じゃあ、はぐれないように手をつなぎましょう」
差し出した手を散葉は凝視して固まっている。もちろん、零也は首を傾げるしかない。
「散葉さん?」
「ひゃん!?あ、ごめんなさい…今、ぼーっとしてたみたい」
それにしては真剣な表情だったような。しかもまた固まってるし。
「散葉さん、どうしたんですか?」
「ご、ごめんなさい…」
恐る恐る散葉は零也の手を取った。零也が何気なく力をこめるとビクーンと体を反応させた。
「ど、どうしたんですか!?」
「あ、あはは…恥ずかしくて…」
人前で抱きつくのは平気なのに誰も居ないところで手をつなぐのはダメらしい。
零也には散葉の恥じらいポイントがわからない。
「もうすぐですから我慢してくださいね?」
「が、我慢なんて!ずっと触れていたいくらいなんだよ!?ただ…恥ずかしくて…」
あ、なんだか可愛いなぁ散葉さん。
普段は見る機会がない散葉の赤面を楽しみながら零也は歩き出した。
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