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「あ、ここですね」
がさっと草をかき分けた先には少し開けた空間があった。
すぐ横の石には『高天原公園』と掘られていたが、散葉にはそんなもの見えていなかった。
「秋になるといつもこうなんですよ?」
高天原公園は木で覆われていて、木の枝々が絡み合い、天井を形成している。
しかし、不思議とその天然の天井は太陽の光を遮ることはない。さらにその天井から舞い落ちる落ち葉は雨のようにとめどない。降り積もった落ち葉によって地面は赤い絨毯となっていた。
「綺麗…」
「あの…散葉さん…」
「ん?なぁに、零也くん」
「ここには誰もいませんから…髪の色、戻していただけませんか…?」
今日ここに来たのは半分がそれが目的だったりする。
赤一色の世界でより鮮やかに揺れる散葉の髪はどれだけ美しいか。考えてしまったから、見たくなってしまった。
零也が見つめる中、散葉の黒髪は赤く染まる。
「…これでいいかな、零也くん」
「すごく…すごく綺麗です…散葉さん」
思わず見とれてしまった。
ある程度の予想はしていたのに、その全てが現実に存在している彼女の前では意味をなさなかった。
「えへへ、そうかな…やっぱり零也くんに言われると嬉しいなぁ…」
何故だろう。
今だったら、できる気がする。
「散葉さん、試してみましょう。神降ろしを」
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