1416人が本棚に入れています
本棚に追加
ドームの壁面に外付けされたステップを駆け上がってくる黒い影に、素早く駆け寄り肩を蹴りつける。そしてそのままよろめいたその懐に走りこみ、相手の利き腕を掴んで勢い良く肘の間接裏に膝を入れた。
鈍い骨の砕ける音、続くうめき声。
膝を降ろし、勢いのまま上体を捻り今度は反対の足を相手の腹部に叩き込む。その衝撃に「がぁっ」と喉の奥で空気が上手く出ずにつまったような声と共に黒尽くめの男は吹っ飛び、四階分の階段を転がり落ちていった。
煌々と夜の闇を照らすドームライトの中で、その体が地面に叩きつけられるのをはっきり見てしまい、吹っ飛ばした張本人であるシンは僅かに眉を寄せる。
四階分の高さだ。足止めには十分なっただろう。
無理やりそう考え、そのままその階段を駆け下りて二階通路へと入り、ドーム内部を通って一階の入り口へと向かった。その後ろに屈強なコマドリ隊員たちが続く。
『艦長に代わりユッカ=モモノイがお知らせします。コード〇三(ゼロスリー)、コード〇三。迅速に対処をお願いします。南ゲート完全封鎖。南ゲート完全封鎖です。これ以降の船外行動は禁止です。繰り返します。コード〇三、コード〇三。迅速に対処をお願いします』
先ほど別れたユッカのはきはきとした声が、通路の天井に取り付けられた伝声管から館内へと響き渡る。
階段をおり左へ曲がると、それまで響いていた銃撃の音が途端に大きくなりその響きにシンは僅かに顔をしかめた。
また、ズン……と脳を揺さぶられるような衝撃を鈍く感じる。
「君」
「……」
背後からかけられた隊員の声に、視線は前へやったまま小さく頷く。
注意を促したのだろう。だが、生憎ぬくぬくと安全な場所で事態の収拾を待つつもりは、シンには毛頭無かった。それが背後の男たちにも伝わったのか、二名がシンの一歩前へ盾になる様に前へ進み出て、走り出す。その彼らを一瞥し一言「有難う」と呟くと、そのままシンは彼らの後に続いた。
鈍い振動はまだ続いている。
最初のコメントを投稿しよう!