2人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
「世は善人で溢れている」
男は世の全てを愛していた。
世の男を愛した
世の女を愛した
世の善人を愛した
世の悪人を愛した
老人を、少年少女を、兵隊を、平和主義者を、思想家を、同性愛者を愛した。
ある時悪事を働いたものへ
「私は憎む自分を憎む、お前が悪へ進むのを止められなかった自分を憎む」
と涙を流し男は言った。
「しかし私は愛す、悪に染まったお前を愛す、悪ごとお前を愛す、なぜならこの世に真の悪人などいないのだから・・・」
悪人の男は涙を流し男に跪いた・・・・
しかしある日男の目に一人の女が止まった。
その瞬間男の体に雷が落ちたかのような衝撃が走った。
「な・・なんと美しい人だ!」
肩まで伸びた艶やかな黒髪
白金のような肌
血のような真紅の唇
しかし男が一番引かれたのは、目だった。
全てを吸い込んでしまいそうな・・・・・それでいて全てを見透かしてしまうような瞳だった。
きっとこの人の前では嘘はつけないだろう。
男はそんなことを思いながら女の方へ歩み寄っていた
最初のコメントを投稿しよう!