全てを愛した男

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「世は善人で溢れている」 男は世の全てを愛していた。 世の男を愛した 世の女を愛した 世の善人を愛した 世の悪人を愛した 老人を、少年少女を、兵隊を、平和主義者を、思想家を、同性愛者を愛した。 ある時悪事を働いたものへ 「私は憎む自分を憎む、お前が悪へ進むのを止められなかった自分を憎む」 と涙を流し男は言った。 「しかし私は愛す、悪に染まったお前を愛す、悪ごとお前を愛す、なぜならこの世に真の悪人などいないのだから・・・」 悪人の男は涙を流し男に跪いた・・・・ しかしある日男の目に一人の女が止まった。 その瞬間男の体に雷が落ちたかのような衝撃が走った。 「な・・なんと美しい人だ!」 肩まで伸びた艶やかな黒髪 白金のような肌 血のような真紅の唇 しかし男が一番引かれたのは、目だった。 全てを吸い込んでしまいそうな・・・・・それでいて全てを見透かしてしまうような瞳だった。 きっとこの人の前では嘘はつけないだろう。 男はそんなことを思いながら女の方へ歩み寄っていた
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