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凍てつくような嵐の夜。
雨に打たれる鎧は、時折鳴り響く雷の閃光を受け眩しく輝きを放つ。
その無機質な鎧に身を包む戦士は、心を持たないガラスの瞳を持つ者と戦っていた。
その戦場のさなか、一人の少年が、その場に立ち尽くしている。
「敵の数はあとどれくらいだ!!」
「予測では百前後……しかし、増援の可能性もあるかと……」
「くそ!これではキリがないではないか!!」
「隊長!このままでは、我が方が傭兵どもに!!」
「傭兵の分際で……神などと手を組みおって!!」
辺りからは、叫び声と奇怪な金属音とが響き渡る。
少年の瞳は憎悪と憎しみに満ち、その冷酷な眼差しで戦場を見渡すと、ゆっくり目の前の亡骸を見つめるのであった。
それは戦場では何の変哲もない光景だった、死人が大勢いる中では、一人や二人の死体は当たり前。
しかし少年にとって、目の前に横たわるこの亡骸だけは信じがたいものだった。
「……嘘だ…」
篠突く雨の中で、そう言葉を漏らす。
誰も聞く者など居ない、なのに喉の奥から込み上げる言葉は尚も声となり、少年の口を動かす。
少年は、嵐に紛れる戦場の中で夜の闇に誓う。
「奴ら……神を、滅ぼす……」
暗闇の遥か空を、その赤き瞳で見上げる。
少年の見上げるその空、どこまでも続く常闇の夜は、永遠とも思える時を刻んでいった。
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