プロローグ

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俺の名は本庄 衛。つい昨日までは、春華姫の出身である那智の国で戦の準備をしていたはずのくノ一だ。女だとなめられたくないがため、俺は女口調を使わない。だから姫様のように女の子らしく可愛らしい方に憧れ……そして、そんな彼女を幼少の頃からお守りしていた。   『衛、おぬしは春華だけの忍じゃぞっ』   いつも無邪気に笑っていて、素直に心のまま行動して俺を困らせた。それでも気高く、自分の意志を曲げたりなどしないお強い方だった。だから俺は、いや……俺たちはみんな、姫様が大好きだった。   だが昨日目を覚ますと、そこには仲間たちも姫もいなかった。それどころか、俺のよく知るお国ですらなかった。   『春華姫?剛毅?斑尾?凪流?』   名を呼んでも返事など返ってくるはずもなく、ただ虚しい気持ちでいっぱいで目を伏せた。そんな時、芽護様に会ったんだ……。   『あの、どうしました?』   『…………姫?』   芽護様は本当に春華姫様にそっくりな方だ。喋り方こそ違うものの、その仕草や外見はまさにうりふたつ。 最初見た時は、まだこの国が一体どこなのかすら分からなかった。だから余計に春華姫と見間違えて驚いたんだ。   『芽護ー。あれ?誰そこの?』   そう言えば刃魔羅……じゃなくて、はまらに会ったのもこの時だ。後で聞いた話だが、二人は同居しているらしい。最も今は俺もその家の厄介になっている身なのだが……かたじけない。芽護様が言うには、あと一人同居人がいるらしいが、現在は旅に出ているとかで行方不明なのだそうだ。確か名は……………忘れた。
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