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「あ!」
「お、彰人。何してんの?」
「今日練習試合でさ。今ちょうど帰るとこだよ
兄貴は?」
「俺もいまから帰るとこ。んじゃ一緒に帰ろうぜ」
ここは家の近くの大通り。 この時刻にも関わらず、先月近くにデパートがオープンした為か、この時間になっても通りにはたくさんの人が歩いている。
空と彰人は他愛のない話をしながらその中を歩いていた。
「今日の試合はどうだった?」
「エヘヘ。『力』使っちゃったんだ。でもそのおかげで勝ったよ。1‐0! 」
空は彰人のこの『力』の事を知っていた。
「全く、そう簡単に『力』を使うもんじゃねぇよ」
「いいじゃんさぁー」
「ま、実は俺も今日は久しぶりに人助けに『力』使ったしな。 それがさ、子供が――」
刹那だった。
頭の中を不快な音が支配した。
突然の耳鳴りと共に、世界が――いや、時間が『停止』した。
『停止』したとしか表現できないだろう。
先程までせわしなく行き来してた人も、車も、街の灯り火も全てがその活動を止めている。
思考は正常だが、体が動かない。 金縛りにあっているかようだ。
しかし、『この世界』で一人動いている者がいた。
体を白いローブで包み、フードをしている為、顔は見えない。 身長は、空の腰程しかない。
異常だ……この空間で一人だけ動ける得体のしれない『なにか』
『それ』は、こちらに近付いてくる。
恐怖で逃げたくても体が動かない。
そして『それ』は、2人の元へ近付くと、軽く跳躍し、額を指先で『触れた』
瞬間
「なっ……」
何事もなかったかのように世界が動きだした。
空達はすぐに異変に気付いた。
動きだした世界の中に空達は『居る』。先程と変わらず話をしながら歩いている。
2人は幽体離脱のように、元の体と別れたのだ。
急いで体を確かめるが、なんの異常もない。 そこに存在している。
混乱していると、足元に魔法陣のような紋様が浮かびあがった。
そして―――
意識はそこで途切れた。
でも、薄れゆく意識の中で確かに聞いたんだ。
『ようこそ』
【神崎 空】
【神崎彰人】
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