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――どこまでも続く白い空間。上も下も右も左もない。あるのは思念のみ。
誰かが俺に語りかけてくる。女性の優しい声だ。
そいつが俺に聞く。
――その『眼』はいつから?
「3年前かな。勉強してたら急にどうしようもなく夜風にあたりたくなって。ベランダに出たら……。
ごめん。その後のことはよく覚えてないんだ。
ただ眩しかったことと苦しかった事は覚えてる。
気付いたら朝でさ、ベットで寝てたんだけど、家族がみんな近くで寝ててさ。 父さんと母さん、それに妹が一人。いい家族なんだよ」
――今日はやけによくしゃべるね?
「普段はあんまりしゃべらない方なんだけど。
今はなんだか。不思議なもんでね」
――この『力』を悪い事に使おうとか考えたこととかないの?
「中3の時かな。ちょうど受験シーズンでいらいらしてたのもあったし、まぁなによりこの『力』を誇示してみたいってのがあって。
街でたむろしてるどーしよもないような不良いるだろ?
ケンカ売ったんだ。 バイク蹴飛ばしてさ」
――それで?
「いきなり殴りかかってきてさ。
20人くらいいたんだよ、その時。
でも、勝った。 こっちはこの<眼>で相手の動作は全て分かるんだしさ。攻撃は当たらないよ。 それに俺、昔さ、武道ちょっとかじってて。
武術にはかなり自信があるんだ。
全員倒してやったよ」
――キモチ良かった?
「その時はね。自分の力に溺れて酔いしれた。
何回か続けたよ。でも……」
――でも?
「父さんに話したんだ。 服とかに血がついてて、怪しまれたからさ。
『力』のことも。
そしたら、怒られた。 お前のその力はきっと神様がくれた物なのに、どうして人の為に使わないんだって。
そしたら、自分の欲望の為に使ってたのがバカらしくて。恥ずかしくなったよ。
だから今はこうやって人の為に使ってるわけだけど」
――ふぅーん。
「ごめん。退屈だったかな?
とゆうより、俺、今なんでこんなこと話してるんだろ?
俺はなにしてたんだっけ」
…………よってここに感謝状を送ります」
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