Chapter0≪導かれし者達≫

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今日は7月21日 初夏といわれるだけあって照り付ける日差しは強く、気温は25度をゆうに超えていて、寝ているというのに嫌な汗をかいてしまう。 時刻は――8時40分 一人の青年がふいに目を開けた。 「だぁ!? やっべぇ……完っ全に遅刻だ。母さんなんで起こしてくれなかったんだよ?またあのジイさんに殺されちまう」 近所一帯に響きそうな声を出して慌てているこの青年。 神崎 空<カンザキソラ>は、急いで身支度を始めた。 空は、高校2年生で剣道部に所属している。 今日は9時から練習の予定だが、このままじゃ遅刻は確定だ。 「何言ってるの……何回起こしたと思ってるの。母さんは疲れました」 壮年の女性、神崎 楓<カンザキカエデ>が呆れ顔で洗い物をしている。 空の母で、普段はデパートの化粧品売場で働いている。 40代なのだが、とてもそうは見えない。若い頃はモテたらしい。と本人は語っている。 ちなみに今日は日曜日なので仕事は休みだ。 玄関ではちょうど一人の少年が家を出るところだった。 「兄ちゃんも進歩しなよね。 いつまでも子供じゃないんだからさ…… そんじゃ行ってきま~す」 この少年、神崎 彰人<カンザキアキト>は中学2年生で、サッカー部に所属している。 ちなみに今日は9時から練習試合だ。 精神年齢は兄より上の空の弟。 黒髪を立たせた髪型に幼さの残る、カワイイといわれそうな顔で、実際結構モテるらしい。 彰人の通う中学は家から徒歩約5分。 目と鼻の先なのでこの時間でも十分間に合うのだが…… 空は着るものもおろそかに急いで家を出ていく。 「行ってきます!」 空の通う高校は自転車で20分もかかるからだ。 「全く、服も脱ぎっぱなしで……」 楓は散乱している服を拾い集めながら呟いた。 神崎家の休日のいつもの朝であった。
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