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ちょうどその頃、空は頭にできたたんこぶを擦りながら走っていた。
「いつつ…… ジイさんめ、本気で叩きやがって……」
時刻は11時15分。
あの後思いっきり先生に面打ちされた空は遅刻の罰としてしばらくの間走りこみをさせられていた。
(てか剣道部なのに走りこみって……)
空が心の中で愚痴をこぼしながら公道にでると、親子連れが楽しそうに歩いている。
子供はボールを蹴って遊んでいるようだ。
こうゆう情景をみると思いだしてしまう……
『あの日』のことを――
あの光はなんだったんだろう。
父はなぜ行方不明になったんだろう。
そして――俺は何故こんな『力』を……
次の瞬間、
空の思考を遮断したのは、甲高い音だった。
原因はトラックのブレーキ音。
親が油断している隙に、子供が転がしてしまったボールを道路に取りにでてしまったのだ。
そこにトラックがちょうど来てしまった。
空の脳裏に最悪の事態が浮かぶ。
今のままだと後1秒もしない内に衝突してしまう。
時間がない。
(やばい)
そう思った瞬間――
空の中で世界が……時間が止まった。
スローになる世界。
空はトラックの前に驚異的なスピードで飛び出すと、子供をわきに抱え、空高く舞い上がり、軽々とトラックの高さを通りこし、荷台に着地した。
空の茶色の髪の毛は、今は銀色になり逆立っていた。
「大丈夫かよ? ボーズ」
常人には視認すら困難だっただろう。
一瞬の出来事だった。
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