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街はオレンジに染まり、大抵の人は家に帰っているだろう時刻、2人の少年少女が道を歩いていた。
「今日はかっこよかったよぉ。 お疲れ様ねぇ」
のんびりした話し方が特長で、おっとりした顔にショートカットの小学生のようにも見える童顔の少女。
橘 莉子<タチバナリコ>
「俺はてきとーに蹴っただけだぜ?
運良く突風が吹いただけだよ」
一応彰人の彼女だ。
一ヶ月程前、だめ元で告白したらオッケーをもらった。
彰人にとって初めての彼女。
しかしまだ手も繋いだこともない。
今日こそ。彰人はそう決心すると、そっと莉子の手を握った。
莉子は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに優しく握り返してきた。
二人を祝福するように夕日の光が優しく包む。
優しい時が流れていった。
時刻は――6時30分
「到着っと」
2人は莉子の家の前についた。
「ありがと」
顔を赤くしてうつむいている。 どうやら手を繋いだのが相当恥ずかしかったようだ。
「それじゃ、今日は試合見にきてくれてありがとな」
「ううん
えっと、あのね……」
「なに?」
「明日も、見にいっていい?」
顔を赤くしながらモジモジして話す莉子に今度は彰人が顔を赤くする番だった。
「う、うん。いーよ!また『明日』ね。それじゃ!」
それだけ言うと彰人は走って帰ってしまった。
(あれは反則だよー)
とか思ってにやけながら。
残された莉子は
「また……『明日』ね」
そう呟いた。
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