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「えーと」
「なんでしょう」
嫌にハキハキと答えるデイジーに、より戸惑いが増す。
一体この高機能性を兼ね揃えた人形もしくはロボット並みの無表情な少女、いや本当は立派な成人女性なのだが。まあとにかく、彼女は何を考えているのか。
ケイには理解のそれを越えている。
徒競走ぶっちぎりで蛙が豹に勝つくらいの越え方だ。
「頭撫でるだけですよ?」
「いや、まあ。そうなんですけどね」
思わずの敬語も様になっていて悲しい。
「別に、恋愛感情とかではないですから」
デイジーが少し困ったように、俯く。
慌ててどうしたものかと考えれば、答えは単純だった。
複雑の複雑は単純なのだろうか。
それこそあり得ないような。
裏の裏は表、とはまた違う。
けれど、きっと。
「ん。まあ、元気だせ」
優しくケイの手のひらがデイジーの頭を撫でる。
山吹の髪は猫の毛よりも柔らかい。
少しくせになる感触ではないだろうか。
「……元気、ですよ」
俯いたままのデイジーから、呆れたため息が聞こえる。
デイジーが抱える感情は、ケイには複雑すぎて。
だけど、分かったのだ。
不安でどうしようもないときに、子供のようにすがれる場所が欲しい。
誰でも思うこと。
それを、ケイに求めてみただけ、と言うことだ。
デイジーの全てを奪ったその原因がケイにあったとしても、デイジーは責める気はなかった。
彼がどんな人物であるかを、知っているから。
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