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「でも、息子の脳にチップを埋め込めば、息子は危険になることくらい分かるだろう。しかも、殺人ウィルスを作成させる人間達が、ケイに手をかけることを躊躇う筈がないことだって」
魅月の理論は最もだ。
疑問に思わない方が不思議である。
これではケイの身を危険に晒し、行く行くは殺人ウィルスを奪われることになる。
現実
ケイは政府の人間が両親となっている。
彼らの手の内なのだ。
「……俺はな、その為の存在だ」
「何を言っているの?」
ハルがさも不可解な表情を浮かべる。
あまりに重たい空気の中、ケイは笑った。
優しい、笑みだった。
「俺の脳には、殺人ウィルスがある。その殺人ウィルスは、ある人物の感情入力が必要だ」
「え……感情入力?どういう意味?」
「ドミノゲームも似た構造なんだが……まあ、違う点は共鳴システムだな。ドミノゲームは核である感情システムに周囲が感染するんだが、この殺人ウィルスは違う。核が動く為に、感情システムを入力しなければいけない。それを入力出来るのは、たったひとり」
瞳を閉じる。
長かったと
ここまで来るのに、どれだけ皆が苦しんで泣いてもがいて立ち上がって。
真実を知ったとき
与えられたものはなんて残酷で
それでも
逃げられない。
今更、知らぬふりは出来ない。
苦しんで苦しんで、自分から泥を被った結を独りには出来ない。
「……俺だ」
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