それを知る者に与えられるモノ

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「好きだった。お兄ちゃんが、好きで好きで仕方がなくて。真実を知ったあとなんて、もっと好きになっていた」 唯一の肉親 自分と繋がる存在。 「私しかお兄ちゃんを守れないんだって思ったら、もう、駄目だった。……寝ているお兄ちゃんがどうしようもなく愛しくて、額にキスをした。それを」 『結!?』 悲鳴に似た、偽物の母親の声は親の声でなかった。 あれは。 「私がお兄ちゃんを好きなこと。それは、お兄ちゃんの危険を察知出来る私が、何をしてでもお兄ちゃんを守ることを意味している。ばれてはいけなかった。政府の人間にとって、一番の障害は私だから」 「じゃあ、結が施設に入ることになった理由は……」 神無月の目が熱くなる。 泣きたくさえなった あまりに非力な少女が抱えていたたくさんの闇は、少女のまともな生活さえ許さなかったのだから。 「お兄ちゃんを、利用する為の準備。邪魔な私を施設に移し、尚且つ私が彼らの手の内にいることを示し、お兄ちゃんを脅す要素を作る為」 言葉は出ない。 結が結の感情をも許せず、更には守りたい存在を守れないジレンマ。 彼女が下した決断。 ドミノゲームの、本当の意味。 「きっと、お兄ちゃんに与えられた道は、自殺しかないから。だから」 ひとりで死なないで欲しい。 奪われてしまう命ならば。 「殺人ウィルスをベースに作られたドミノゲーム。これを以て、政府の人間に恐怖と後悔を与え、お兄ちゃんをひとりにしないこと。……私には、これしか、出来なかったの」 あまりにも 悲しい残酷な真実は 新たな闇を生んだのだ。
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