390人が本棚に入れています
本棚に追加
「好きだった。お兄ちゃんが、好きで好きで仕方がなくて。真実を知ったあとなんて、もっと好きになっていた」
唯一の肉親
自分と繋がる存在。
「私しかお兄ちゃんを守れないんだって思ったら、もう、駄目だった。……寝ているお兄ちゃんがどうしようもなく愛しくて、額にキスをした。それを」
『結!?』
悲鳴に似た、偽物の母親の声は親の声でなかった。
あれは。
「私がお兄ちゃんを好きなこと。それは、お兄ちゃんの危険を察知出来る私が、何をしてでもお兄ちゃんを守ることを意味している。ばれてはいけなかった。政府の人間にとって、一番の障害は私だから」
「じゃあ、結が施設に入ることになった理由は……」
神無月の目が熱くなる。
泣きたくさえなった
あまりに非力な少女が抱えていたたくさんの闇は、少女のまともな生活さえ許さなかったのだから。
「お兄ちゃんを、利用する為の準備。邪魔な私を施設に移し、尚且つ私が彼らの手の内にいることを示し、お兄ちゃんを脅す要素を作る為」
言葉は出ない。
結が結の感情をも許せず、更には守りたい存在を守れないジレンマ。
彼女が下した決断。
ドミノゲームの、本当の意味。
「きっと、お兄ちゃんに与えられた道は、自殺しかないから。だから」
ひとりで死なないで欲しい。
奪われてしまう命ならば。
「殺人ウィルスをベースに作られたドミノゲーム。これを以て、政府の人間に恐怖と後悔を与え、お兄ちゃんをひとりにしないこと。……私には、これしか、出来なかったの」
あまりにも
悲しい残酷な真実は
新たな闇を生んだのだ。
最初のコメントを投稿しよう!