それを知る者に与えられるモノ

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「ぐあっ!?」 悲鳴のあとの再悲鳴。 情けなく倒れ込んだケイは思い切り叫んだ。 「女が回し蹴りすんなよ!?しかもそんな格好でっ」 「……次は、踵落としか?」 ハルの口調が変わっている。 ゴスロリの、ミニ丈のワンピースで足をあげようとするハルは既に恥もくそもない。 怒り一点。 「だあっ!はしたないのは神無月だけで充分だぁっ。落ち着け、とにかく落ち着け」 「ハル、まあまあ」 楽しげに声を弾ませ、魅月が背後から抱き締める。 「……ん」 「止まるなよ……」 泣きたくなる気持ちを抑えながら、ケイはそっと呟いた。 「…………」 何も言えずに立ち尽くす、滉。 目の前の光景に圧倒されている。 「ケイ、結は、ここに来るのね?」 「あ?……ああ、神無月と一緒に、来るだろうな。神無月なら」 その言葉に頷く。 要は、神無月が結を連れてくると言う意だ。 「なら、分かってるんでしょ」 ぎゅっと強く魅月の腕を掴む。 不安を隠すかのように。 「でも」 「でもじゃない」 「……じゃあ、だけど」 「屁理屈は聞きたくない」 「我が儘」 大仰に息を吐き、ケイは肩を竦めた。 「そんなら、賭けよう」 ケイはそう言って、人差し指を立てた。 「俺は、俺の命と殺人ウィルスを、お前らに。ハル、魅月、茜、デイジー、神無月。この5人に、預ける」 「……上等」 終わるんじゃない 始まるんじゃない そう。 「まだまだ長いわよ、先は」 生き続ける。
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