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じゃあ、例えば。
ドミノゲームから解き放たれた後。
彼はどんな決断を下すのか。
そこに光は
希望は、あるのか。
「ケイ」
茜がびくりと肩を震わせた。
ただ単に、隣で聞こえた声に驚いただけなのだが。
「ん、どうした。デイジー」
優しい声音
聞いていて心地好い。
ふと
結と同じ立場にいて、ケイみたいな兄がいたとしたなら
好きになるかもしれない。
そんな下らない可能性を、茜は考えて、また悲しくなった。
「ずるいです」
「は?」
「頭、撫でてください」
「……はぁっ!?」
すっとんきょうなケイの声は、不憫なほど地下の空間によく響いた。
「……嫌ですか?」
無表情のまま尋ねられ、まるで末恐ろしいものを目の当たりにしたかのような怯え様で、ケイはジリジリと後ずさる。
「ハルと言い、お前と言い、何が起こったわけ」
「そう、言い残すのはそれだけね」
背後から冷たい気配、もとい声。
気付くと両腕を掴まれている。
「うわっ、ハル!」
「はい、デイジー。ご所望の品」
「……どうも」
「俺は物じゃねーーっっ!」
「え……えーと」
一連の騒ぎに着いていけず、茜は呆然と目の前の光景を眺めている。
「立てるかい?」
ふわりと
右腕を掴まれたと思えば、優しく体を引き寄せられる。
「あ……滉」
「とりあえず、起きないか」
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