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「戻るわけか……」
思案を巡らせ、滉は目を細める。
「一応、根拠はあるわよ」
「だろうね」
「一応」
繰り返された一応の単語の意味を、深くは知りたくない。
一瞬眉をひそめた滉からは、そんな願いが聞こえてきそうだ。
「神無月が、結からの手紙を受け取った直後。彼女はすぐに飛び出していった。お金も持っていない筈だわ、だから、あの近くに2人がいる可能性がある」
一応を復唱したわりには、筋の通った可能性をあげ、ハルは人差し指を立てた。
「なら、いざという判断時、動けるのが2人にせよ、片方にせよ、近くにあるあの場所に行く可能性が高いわ。結だって、あの屋敷の位置は知っているんでしょう」
「ああ、確かに」
「なら、文句ない?」
満足気に笑うと、彼女は魅月の腕をひいて地上へのびる階段へと足をかけた。
「タクシー呼んでくる」
言うが早いかで階段を昇り、姿を消した。
「女は怖いな……」
「ん?」
呟く滉の顔を茜がのぞきこむ。
「いや、こちらの話」
上辺の笑みを返して、滉は茜の腕から手を離す。
そのまま背を向け、モニターを眺める姿勢になった。
ハル達が戻るのをただ待つのも落ち着かず、茜は何とはなしに、取り残されたケイとデイジーを眺めてみた。
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