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『なら俺は希望を示す道の花をかざそう』
『希望?』
『そうだ。踏まれても踏まれても、諦めず立ち上がり続けた、あまりに美しい花の姿さ。俺の命を懸けて、絶望しかないこのゲームに光を灯そう』
「滉?」
タクシーから降りて着いた神無月の屋敷の前で、滉はぼんやりと立ち止まっていた。
名を呼ばれ、振り返る。
不思議そうにしたハルの姿。
「……なあ、聞いていいか?」
「なに」
躊躇いつつ、滉は他のメンバーが先に入っていったことを確認して、口を開く。
「希望はあったか?」
「……ええ」
息を飲む。
こんなハルは知らなかった。
優しく笑う、女性の姿。
哀しくも綺麗で、儚い。
「少なくとも、私にとっては。1人生きていく人生よりも、煩わしい生き方のほうがしっくり来るのかもね」
そう言って、彼女は扉の向こうへと歩いていった。
「……そうか」
1人呟くと、滉は空を見上げる。
「結。結には、微かに輝く光が見えるか?道端の、小さな花は、声は、届いているのか?」
問いかけに答える者はいない。
今はただ
君を待つ。
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