390人が本棚に入れています
本棚に追加
泣きたくても泣かない。
それは、些細な決意かもしれないけれど。
「分かった?あなたに、このゲームを止める手段もなければ意味もなく、権利さえない」
結は涼しい表情をつくり、神無月に話しかけた。
神無月と言えば
神妙な顔付きでただ結を見つめている。
――――考えろ。
目眩さえ覚える驚愕の絶望を前に、彼女は必死に出口を探っていた。
諦めてはいけない。
ここで、自分が終わりを決める権利こそ、ありはしないのだから。
今出来ることを、結を死なせない為に、仲間の死を止めケイが生きる意味を見い出す為に、何をすればいいのか。
諦めるな
まだ諦めるのは早い筈。
考えろ。
「もう、いい?」
結は呆れたようにため息をつき、手にしているナイフを翳す。
「さあ、終わりよ」
歪んだ笑顔が空を仰ぐ。
沈みかけた日が、その頬を赤く染め上げていく。
『お前、俺が好きだろ』
ケイ。
『護るよ』
馬鹿なやつ。
心の中で吐き捨てて。
なら、約束、忘れないでと、願った。
「良かったわ」
小さく呟く。
最期の最後、ケイを生かす、そしてドミノゲームの闇に光を射す鍵が
あなたを好きになったことで、良かった。
神無月は背中を押されたかのように走りだし、結にぶつかった。
彼女は驚きよろける。
手から離れかけたナイフを、違う指が絡めた。
最初のコメントを投稿しよう!