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玄関に妊婦がやってきたその1ヵ月前
あたしは
子供を堕ろした。
無論タケシの子だった。
タケシは
婚姻届を持ってきて
あたしに書くように言ってきたけど、
ものすごく喜び
うかれながら
友達にも言っていたけど
あたしは
なんとなくする
嫁の気配に
不安になって
沢山悩んだ。
一人で産もうかなとか…
いっそ嫁の存在をタケシに確認しようか…
そして別れてもらおうかと。
だけど
17歳のあたしには
その責任を背負う事は
出来なかった。
もう季節はクリスマスや年越し の時期で
街は綺麗に彩られ
歩く人達は
笑顔だった。
そんな中を一人で
歩いた。
全身の麻酔は切れたものの
まだ頭の中が
フワフワした。
楽しそうに歩く人々を
欝陶しく思いながら
涙は頬を伝った。
歳が若くても
母性っていうのは
あるもので
赤ちゃんが
いなくなった事に
あたし自身自暴自棄に
なりはじめていた。
気にして
掛けなかった夜中の電話を
タケシにするようになったし、
眠っている時間に
わざと呼び出した。
だけど
タケシは最後まで
自分が結婚している事を
言う事はなかった。
本当はあたしの
思い込みなんじゃないかと疑う程
優しい笑顔。
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