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千早の話を聞き終えた二人は黙ってしまった。 やはり、話が支離滅裂だったかと千早が心配し始めたころ、二人がやっと反応を返してくれた。 「でも、よかったよね~。千早ちゃん。偶然、直尋君が通りかかってくれて」 「そうだよな。下手すりゃ何時間もそこでぶっ倒れたままだったからな。これだけはあのいけすかない転入生に感謝だな」 しばらく談笑した後、養護教諭の元隆哉(はじめたかや)が保健室に入ってきた。 教諭らしくもないだらしない格好をした男性だが、評判は何かと良い(特に女子から)。 隆哉はベッドの上の千早とその脇にいる美里と礼一を見つけると、息を吐いた。 「千早ちゃん。一応、親御さんに連絡しておいたけど、平気そうだから授業に出れる?」 「あ、はい。大丈夫です。あの、弓槻くんは…?」 「あ~。アイツは別に何ともないよ。弐塚からここまで結構距離あるけど、息一つきらしてなかったからね」 「そう、ですか…」 「ま、そこのチビ一くんじゃ、出来なかっただろうけどな。よかったな、通りかかってくれたのが弓槻で」 隆哉の言葉に、ビキッと音がしそうなぐらい礼一の額に青筋が浮かんだ。 笑顔の口元を引きつかせながら、礼一は隆哉に詰め寄る。 「元先生…? 今、養護教諭らしくない発言を聞きましたが?」 「だって本当のことだろ? 本当のことを言って何が悪い、チビ一」 煽るような物言いの隆哉に、礼一は般若と化した。 「うるせぇ、おっさん!! 俺だって好きでこんな身長に甘んじている訳じゃねぇんだよ! いつかお前を越すぐらいに伸びてやるからな!!」 「それはいつになるだろうな~。だって、お前、俺の胸くらいしかないじゃないか。あと、俺は25でおっさんじゃねぇ。お前らと7、8しか違わねぇよ」 火山噴火のごとく憤る礼一と柳の様にのらりくらりとかわす隆哉のいつもの言い争いが始まった。 不意にがらりと、保健室の引き戸が開いた。
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