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嫌な夢を見た。 いつも繰り返し見る、夢。 詳しい内容は分からない。 だが、この夢を見た後はいつももやもやとした気持ちが残る。 「千早~、早く起きなさ~い!」 河邑千早(かわむらちはや)はゆっくりともやもやとした気持ちを振り払った。 手早くセーラー服を身に着け、セミロングの髪を結い、階下に降りる。 「おはよう、千早。今日はよく眠れたかい?」 「おはよ、早兄。最悪だよ、今日も。あの夢見ちゃった」 千早の兄、早人(はやと)は綺麗に弧を描いている眉宇を顰めた。 「またか。この頃、多いね。何かストレスでも溜まってるんじゃないかい?」 「大丈夫だよ、早兄。寝不足にもならないから」 「そうかい? ならいいけど。何かあったらすぐに言ってくれよ」 心配そうに早人は千早を見つめる。 身内といえど、格好いい部類に入る顔に見つめられると、何だか申し訳無くなってくる。 「大丈夫だってば、早兄。何かあったら、ちゃんと言うから」 「分かったよ。千早。さ、早くご飯を食べよう。遅刻してしまうよ」 「あ、やばい! 待ち合わせに遅刻しちゃう!」 千早は急いでご飯を食べ、家を出ようとする。 その背を見て、早人はぽつりと呟く。 「……だね」 「え? なんか言った、早兄!?」 「ううん。何でもないさ。気をつけて行っておいで」 「うん。じゃ、行ってきます!」 千早は家を飛び出す。 早人は心配そうにその後を見ていた。
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