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直尋はそこで口をいったん閉じた。
そして、また話し始めた。
「今週の仏滅。仏も滅入る日にまず最初の怪異が起きるだろう。そして、その日に赤は予兆を感じ取る。青よりも強い力を持つ赤の覚醒には時間がかかる」
直尋の言葉に、千早の心臓が、強く波打った。
千早は本能的に逃げないといけないと思った。
ここから先は、聞いてはいけない。
聞いてしまっては、元の生活に、普通の生活に戻れなくなる。
「な、何を言って…!?」
「その次の大安。すべて安泰と思われる日。第二の怪異が起きる。その日に赤は力を取り戻す」
「やめて……」
「赤口。万事に用いない悪日。第三の怪異が起きる。その日に赤は能力を取り戻す」
背中に冷たい汗が流れる。
鼓動が速い。頭がふらふらする。視界が、曇る。
「先勝。万事に急ぐことがよい日。第四の怪異が発生する。その日に赤は頭脳を取り戻す」
「やめてぇっ!!!」
千早の悲鳴に、淡々と紡いでいた直尋の言葉が止まった。
心臓あたりを押さえ、荒く呼吸をしている。
汗で髪の毛が張り付いている。
直尋は千早を見下ろすように立っていた。
「………赤」
「私は赤なんて名前じゃない、千早よ。河邑千早、それ以上でも以下でもなんでもない!」
「―分かった。千早。もう、何も言わない。だが、敵と“鬼かくし”には気をつけろ」
「おに…かくし……?」
千早はそれだけを言うと、今まで保っていた糸が切れた。
かくんと足が折れ、そのまま立てなくなる。
そして、意識を失った――。
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