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友引。
自分の名を呼ぶ声で、千早は目覚めた。
うっすらと天井が見える。
「……あれ…ここは………?」
「千早ちゃん!!」
隣にいた美里が顔を明るくした。
ぼうっとした頭で周りを見渡す。日は高く昇り、もう昼ごろだろうか。
「ここは保健室だよ。吃驚したんだよ、千早ちゃん。弐塚の頂で倒れてるのを弓槻君が連れてきてくれて。ね、どうして弐塚の頂に行ったの?」
「弐塚…弓槻……」
靄がかかったようにぼんやりとしていた頭が急に冴え渡った。
直尋の言葉が、頭の中で繰り返される。
『今週の仏滅。最初の怪異が起きる―』
「美里! 今日は何日!?」
「え、何日って?」
「ほら、あの先負とかの!」
「う~ん。そうねぇ。今日は友引かなぁ」
「友引!? 仏滅まで、あと何日!?」
「ど、どうしたの、千早ちゃん!?」
「いいから!!」
突然の態度の豹変に美里は何も分からず、ただおろおろするばかりだ。
千早はそんな美里にうまく説明できない自分に苛立った。
感情が高まり、激昂しそうになったとき。
「今日を入れて、あと二日だ。千早」
落ち着いた声が千早の高ぶった感情を沈めた。
「礼一……」
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