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「夕希、コイツと何か約束してたの?」
俺は反射的に、ぶんぶんと首を横に振った。
「酷いな、夕希。もう忘れたのか?」
兄貴が端正な顔に、憂いの表情を浮かべた。
その瞬間、兄貴の後ろにいる親衛隊達から、不穏な空気が沸き上がってくる。
(兄貴、計算してやってるな……)
猫を被っている兄貴は、自分の表情が周りにどう見えるかを計算してやっているからタチが悪い。
「お前との約束なんて、忘れられる程度のものだったんだろ?」
暁の挑発的な眼差しにも、兄貴は揺るがない。
「それはどうかな?夕希?」
この状況で、俺に話を振る兄貴は悪魔だ。
(今すぐ、ここから逃げ出したいよ……)
俺は兄貴にバレないように、必死で逃げ道を探していた。
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