1人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
死を自ら選べる事は人に与えられた尊厳だと言う
僕は彼女の言葉を聞くたびに滅入ってしまうが決して離れられない重力をも感じていた
それは愛と呼べるモノではないだろう
だけど、そこに『何か』が確かにあった
『十歳の頃からね、このイタミに耐えてきたの。七年、もう八年になる。癒される時間は傷を受けた時間の倍掛かるんだって。そしたら私、もうオバさんじゃん?』
自嘲気味に、そんな経って癒されても…
私は今、この瞬間が欲しいんだ。と、続けた
僕は理由知り顔の大人みたく『あっと言う間だよ』なんて言えなかった
『倫理の授業でね、死について書きなさいって言うのがあったの。皆は脳死を人の死とするのはどうか?とかちゃんと書いていたけど私は何も書けなかった。私は死に憧れている。早く死にたいんだ。って二三行書いて出したんだ』
彼女の言葉を聞きながら(80年代にメメント・モリって言葉が流行ったな)なんてぼんやり考えていた。
『愛ってよく解らないの』
唐突に彼女は言う。
彼女の言葉は束縛から離れたフリージャズのようだ。
それは俺もだよと言うと彼女は微笑みほんの少しだけ心を開いてくれたみたいだった。
彼女は良くお父さんの話をした。大好きだったから許せないお父さんの事を。
『この間、小遣いせびりに行ったら女と暮らしてたの。娘には隠して欲しかったよ。』
お父さんも男なんだから仕方ないよ。それでも君の事、大事だと思うよ。子供は可愛いもん。
『そうかなぁ』
まんざらでもない風に呟いた。
やっぱりそういう仕草は幼いんだね。
体を合わせる。
生きている彼女の体温、鼓動がこんなに近く感じる。
そして誰も埋めた事ない彼女の隙間を埋めた。
僕は示したい。喜び、感動、発見。
まだまだ僕らが知らないものがこの世界にはあるはずだから。
最初のコメントを投稿しよう!