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『なんか感動するね』
終った後、彼女が言った。
以外だな、そんなにしがみ付いてくるなんて。
彼女の体重を感じながら僕は久々に幸せな気持ちになれた。
俺は世界一ラッキーな男だ、何でもしてあげたいよ。
『その言葉忘れんなよ』
ちょっと怖いな、気持ちはあるんだ。無理な事も多いけどさ。
彼女を送る帰り道、ずっと彼女から暖かい波を感じていたそれは女性だけが持ち得る柔らかさだろう。
セックスは偉大だ。
人が人を愛し続ける術は許しあう事だけだと思う。
その気持ちをいつも思い出させてくれるから。
たった一度の経験で彼女は女になってゆくようだ。
優しさと嫉妬も自然と表れる。
『奥さんってどんな人だったの?』
自分の事ばかり喋っていた彼女が多分、初めて僕の事を聞いた。
うーん…。
正直、困った。
僕はその人を二人知っている。
明るい太陽のようだった女性とどんより曇った空のような女性。
僕の妻としての彼女は後者だった。
いつからだろう?優しさの連鎖が断ち切れてしまったのは。
いつからだろう?憎しみの連鎖が始まってしまったのは。俺の元奥さんねぇ…。どんよりした人だったよ。
それから僕は、自分の事を話し始めた。
解りあう為ではなく、ただ吐き出す為に?
そうかもしれない。問わず語りに語り続けた。
俺の全ての愛を置き去りにしてしまった人の話。
人を愛せなくなったカ×ワな自分。
重苦しい生活。
それでも俺をこの世界に留めたモノは…。
俺はまだ信じている。
街は美しく人々は笑っている。
愛したい、この世界を…人を愛したい。
君の駅に着いてしまった。
『来週、また会ってくれる?』
勿論。
名残惜しそうに手を絡めてくる。
僕は一つ示せたかな?
いつか君が去って行く時、君が今より自分を好きになってる事を…。
僕の全ての幸いをかけて願っているよ。
BGM She Said She Said:THE BEATLES
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