遅れてきた神

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牢獄の中、神が現われた。 人々を解放に導く神が。 我儘な神は遅すぎた解放に悪怯れず言い放つ。 『人間の事なんて、すっかり忘れていたよ』 信心の欠片もない男が神を目の当りにしてこう云った。 『いままで、この精神の牢獄に閉じ込められていたのは、神の計画ではないのですか?これは罰ですよね』 神、にべもなく言い放つ。 『いや、お前達(人間)の事を忘れていただけだ』 男は卑屈な笑顔で神に媚びるようにまだ語る。 『神様、貴い方の御心は、すべて大いなる計画のままに動いておいでです。これも計画のうちですよね』 神、怒りを露にし、大声で男を怒鳴りつける。 『しつこいぞ!忘れていただけだと言ってるだろう!!』 男、神の怒りを買い、憐れにも何も言えなくなる。 静かになった空間で、神は少し落ち着きを取り戻したようだ (確かに、この男の言うよう私の計画通りに、宇宙までが奇跡のバランスで未だ動いている。しかし…) 『どちらにせよ、計画していた事象を為す時は、過ぎてしまった。人間は、私(神)の手をもう離れなければならない。』 こうして俺たちは、この宇宙の片隅に放り出された。 神からの解放と言う免罪符だけを手にして。 ところで、神の人間に関する計画とは、いったい何だったのか? 例の男には残念ながら解らなかったらしいが、幸いな事に俺は知っている。 しかし、今となってはどっちでも良いことだろう。 ただ神の計画を、俺たちの手で為すのなら…。 その時は知覚の扉が清められ、真実は明らかにされるはずだ。
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