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「おや、こんにちは」
毛利が何をするでもなく高松城周辺を散策していると、木立の向こうからふいに声が飛んできた。
「…ふん、貴様か」
病的な白い肌、虚ろだが鋭い眼孔、笑みを崩さぬ表情、その右目の上にも掛かる銀色の絹のような髪。
ふらふらと覚束無い足取で姿を現したのは、織田家家臣である明智だった。
「尾張に陣を張る織田の狗が何故此処に居る」
ゆっくりと近付いて来る明智に、毛利は淡々と話しかける。
「此処は景色がとても良いので、休暇を過ごすには良いかと思いまして…」
木陰から出、日光の眩しさに目を瞑りながら、明智はなおも歩み寄ってくる。
相手が丸腰だと確認した毛利は、警戒を少し緩めてそれを眺めていた。
雪のように真っ白な肌、日光に当たって白く光り、肩や顔の上で踊る銀髪。
何もかもが真っ白だった。
その眸に湛えられた闇、以外には。
「ふん、下らん」
毛利が言った時に、明智は漸くその左隣に身をおいていた。
「あら、つれないですね」
明智は言う。
「折角此処まで貴方に会いにやってきたというのに」
「相も変わらず気持ちの悪い奴め」
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